或る日、僕は

「ほぅ…お客さんか、珍しいな。ここはダンジョンだ。わたしはここでコーヒー飲んでるから、ゆっくり見て行ってくれ。幸運を祈る。」Since 2014.

あらすか

 朝起きて歯を磨いて洗顔して、昼ご飯を用意して昼ご飯を食べて、ゆっくりめに昼を過ごして、夕食を食べて、風呂入って歯を磨いて寝る。いたって平凡な日々。

 朝起きたら毒虫になっていたということもなければ、昼ご飯のBGMに交響曲が流れることもなく、ゆっくり過ごす昼間にワイドショーを観ることもなく、夕食をディナーと呼ぶこともなく、風呂で熱中するわけでもなければ、歯を磨いていてもたいして風変わりなことをやっているようには思えない。

 特に変わり映えしない日々。

 さりげなくも、はかなくもなく、たくましく強さを兼ね備えたあたり、実にしぶとく生きている。

 なにがしかの、やんごとなき、みおもてには、つぶさにみまごうことなく、しとねをおもふばかりのみ。

「あら…。スカだわ…。」

 ほのかにかほるむらさきの寿司飯をほっぺにつけて、てれながら乳房のゆれるみすがたにほほあかくほてりにける。

「なんじのおもてをおもいだせぞ」

 若はさらさらと寿司飯を召し上がりける。

「あらすかだわ」

「ひみつだぞ」

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